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広島家庭裁判所 昭和45年(少)434号 決定

少年 S・S(昭三〇・一二・一六生)

主文

本件について審判を開始しない。

理由

本件送致事実の要旨は、少年は(一)昭和四四年八月○○日頃の午後一時頃安佐郡○○町大字○○○×××番地○岡○一方西方約二〇〇メートルの太田川左岸河川敷において、所有者不明の腕時計一箇(時価七、〇〇〇円相当)を窃取し、(二)同年一一月○日午後四時頃安佐郡○○町大字○○×××番地○○町営住宅○○○号○藤○方において同人所有の腕時計一箇(時価五、〇〇〇円相当)を窃取したものである。

というのである。

よつて按ずるに、一件記録によれば、上記送致事実は優にこれを認めることができ、本件非行が警察官に発覚したのが昭和四五年二月二八日であり、捜査が遂げられた末これが司法警察員から検察官に送致されたのが同年四月三日であり、ついで検察官から当裁判所に送致されたのが同年四月一八日であり、本件非行時には少年は一四歳未満であつたけれども、当裁判所に係属した時は既に一四歳に達していることが明らかである。然しながら、少年法三条一項二号、二項が、一四歳に満たない者について都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り審判に付することができるとしているのは、単に家庭裁判所の審判権の範囲を画するためだけではなく、責任能力の限界をも加味したものであり、刑事責任年齢に達しない者が非行を行なつた場合にはまず児童福祉機関に先議させその処置に委ねる趣旨であると解するのが相当である。そうだとすれば、本件は県知事又は児童相談所長から送致を受けていないことが明らかであるから、審判に付することができないものというべく、よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 渡辺宏)

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